児相被害110番 +

2021年版の児相被害110番(現在版)です。

国連の「一時保護措置廃止」勧告と日本児相の対応

2月1日付けの文書で国連子どもの権利委員会から日本政府に対して児相被害や日本児相の一時保護にまつわる諸問題に最終勧告が出された。その中の第28項で

(a)「多くの子供たちが司法の命令無しに家族から分離され、児童相談所の元(つまり一時保護所)に2か月の間置かれ得る」事への懸念

(c)「より多くの児童を入所させようとする強い財政的インセンティブ」に懸念が示された。

また29項

(a)「子供を家族から分離する際には必ず司法の判断を仰ぎ、子供分離の明確な判断基準を定め、親と子の意見を聞いた後に、その保護と関心の必要性のある時に行い、かつ親子分離が真にやむを得ない場合に限る」と現行の一時保護制度は否定された。

それに続き

(c)「児童相談所の一時保護措置を廃止」するように勧告された。

これは日本の児相問題を解決する上で大きな一歩である。尽力された児相被害者団体には感謝の念を伝えたい。当団体も微力な協力以外は見守る立場であったが、見ているだけでもその大変さは伝わってきた。同時に、これから先はまだ長い事を感じる。この国連勧告には「日本国内での法的拘束力はない」と言う最後の砦があるためだ。しかし、日本政府は今後、後続措置を子どもの権利委員会に報告しなければならない。

これを受けて日本の児相もなんらかの形で動きを見せなければならない。特に現在の一時保護措置の形は全面的な変更が必要だ。児相側がどんな組織変革を行うのだろうと思っていたところ2月10日の新聞でこのような報道があった。

「児相の家庭への『介入』強化へ 親支援の部署と機能分離」

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本来、児相は子供の支援と同時に親の支援も行う建前があったのだが、ご存知のように実際は親の支援は皆無に等しい。そして子供の支援と言う名の強制親子分離が数多く行われてきた。そこに今回の親子分離の主戦場である一時保護所の廃止勧告である。

 日本児相は「子供を保護する『介入』の機能を強化」すると言う。児相用語は名前と実態が異なる事があまりにも多いので「介入」機能強化では本当の意味が分からない。これは要するに、これまでの通称「児童拉致」と呼ばれた機能は温存、強化して「特別介入分離機動隊」とでも言うような組織を創設し、従来の親子支援の部署と分けると言うのだ。

厚労省は「子どもの命と安全を守る社会的使命に応えるためには、介入と支援を担当する部署などを分ける必要がある」と言う。

役所的には「特別介入分離機動隊」に本当の部署名を付ける訳にはいかないから、従来の親子支援部署を親支援部署とし児相にもっぱら来る親などへの表の支援対応をし、「特別介入分離機動隊」を子供支援部署として、通常では成人一般市民がアクセスの必要の無い裏の部署となる可能性が感じられる。

親支援部署は国連勧告に沿った機能を演出することになるのだろう。そしてこの部署の働きを後続措置として国連に報告すれば、日本政府にかかる問題解決に向かう。問題は「特別介入分離機動隊」が現在よりも目に付きにくいものになり、より専門性の高い拉致組織化してしまう恐れがあることだ。

厚労省は「すべての児相に弁護士、医師、保健師を配置することも検討している」と言う。これは以前だったら虐待診断をする医療従事者を外部の病院へ、対応に問題が起これば外部の法律家へ向かう必要のあった小規模児相も自前で身内の虐待診断、自らを利する法律知識を得られる事を意味する。

厚労省は一時保護措置の廃止勧告など都合の悪い事はマスコミに情報提供しない、させない体制だが国際的に一時保護に制限がかかっている。

しかし児相はこれまでも自分たちの職権に制限がかかったときに、周辺児童福祉組織と協力する形でその制限を骨抜きにした前科がある。

その代表例が「一時保護2ヶ月」規定だろう。従来、児童福祉法33条3項で一時保護の期間は「二月(二ヶ月)を超えてはならない」とされ例外的に、4項「前項の規定にかかわらず、児童相談所長…は、必要があると認めるときは、…一時保護を行うことができる」とされたが、これを限りなく拡大解釈して、担当児相職員が延長すると言えば、「何度でもいつまででも」延長されるという実務濫用が平成初期には蔓延し、子供の最大入所日数は非公開であった。

さすがに、このような非人道的措置はまずいと5項で強制一時保護をする場合、「家庭裁判所の承認を得なければならない」とされ、平成28年に運用が開始される事となったが、厚労省に約半数の児相が「一時保護の審査に司法の判断は要らない」と回答した。そして蓋を開けてみれば、「児童福祉審議会の意見」を聞けば延長できる実務運用となった。審議会で意見を聞けば全ての事例で延長が認められる身内判断の骨抜きの適正手続き保証となったのである。昨年やっと厚労省から2か月毎に家裁判断をするようにとの通達が出たが、また一転して厚労省自ら例外事項を山盛りにした通達を児相に送っている。いつまで一時保護所が「一時」ではない現状は続くのであろうか。

(猫の目の様に変わる通達。ここに厚労省内部も一枚岩ではなく目指す方向を異にする力がぶつかり合うのを感じ、一瞬ではありますが厚労省もまだ良心のかけらは残っていたのかと評価したくなった事もあります。一瞬なのが本当に残念でしたが。)

今回も日本児相は「子供を家族から分離する際には必ず司法の判断を仰」ぐようにとの国連勧告を擬似司法関連団体の判断へとすり替えて、「特別介入分離機動隊」の運用ができるようになると考えているのだろうか。